山村テラスが生まれるまで
その小屋の外枠と屋根だけを作り直した後、約2年間放置していたが、フィンランドでの体験を得たことで方向性が決まる。
徐々に製作を進め、2013年5月には電気が通るようになった。
「やっと家らしくなってきた…」
オープンしたが「感じる違和感」
農業で収入を得ながら、2014年の4月に山村テラスとしてついにオープンする。
最初は、お客さんや山村に住んでいる人たちと共に「山村の新しい文化をつくる」と思っていて、沢の水を雪の中を歩いて何度も汲みに行ったり、トイレの排泄物も汲みとって、畑まで蒔きによくいった。
かっこいい部分には、必ず泥臭い一面もある。
当初はカフェのようなオープンスペースや森の案内などもしていたが「何かが違う」と感じていた。
「自分の生活をリセットする場所なはずなのに、全てがそこに集約されてしまっていたのだ」
小屋の良さを最大限に引き出せるよう、Airbnbを活用して「貸切で一組だけがゆったり滞在できる場所にしよう」と決めた。
自分の理想を表現するために、別に住む場所もつくり、小屋は完全に貸し出すことに。
この決断が後にビジネスとなる。
何気ない風景をずらすことで見えてくるもの
何もない山奥でも、白い椅子を一つ置くだけで、見え方がガラリと変わる。
椅子がないと、その景色は見えてこない。
「自然の中に建築を取り入れ、建築の中に自然を取り入れる」
フィンランドの有名な建築家、アルヴァ・アールトの影響を強く受けた。
家具などは、廃校や酒蔵、古民家などからもらってきたものを活用し、一つずつ形にしていくことで、協力してくれる仲間も増えていく。
そんな思いのつまった山村テラス来訪者の特徴として、「生きる力の強い人」が多いと語る。
自分の生活環境を思い通りに良くするクセのある人。
「外国人は目的を持たずに長期で、日本人は目的を持って短期で」と言った特徴がある。
作曲をした後ライブをして行くゲストさんや、プルーン畑でアコーディオンを弾くカップルのゲストさんもいて、来訪者によって空間の色が変わる。
山村に生きるということ
旅人は、その土地の文化に触れ、住んでいる人たちに会い、彼らの生き方に惹かれるのではないだろうかと。
アイデンティティやライフスタイルによって生み出される想像ができない空間を提供したい。
空間づくりでは、最初の半分は自分でつくり、残りの半分は自分が生活し、体験を通してカスタマイズされた空間作りをし、命を吹き込む。
そして、足を運んでくださるゲストさん達から、学んだり発見しながら感覚的に色々な要素を吸収し、吸収したものを反映していく。
結局、文化は自分たちで作っていくしかない。
今の時代で生きやすかったり、面白いことはなんだろうと考え、常に作り変えていく。
そして、時代ごとに切磋琢磨し、文化を更新していく。
教育など受け継いだものも、自分たちなりにアレンジして、後世に渡していく。
これからも、自分の手の届く範囲で力強くトガり、足りない部分は周りに支えてもらえるような生き方を目指していきたい。
山村テラスの次なる未来は?
川の畔で、釣った魚をもっともおいしく食べられる小屋や、棚田の一番上でおにぎりを食べながら一日中豊かな風景をのんびりと眺められるような場所を増やしていきたい。
そして、単に宿泊場所を提供するのではなく、そこでしか味わえない過ごし方や時間の使い方を提案していく。
訪れると心地いいと感じることができる、みんなのセカンドハウスとして。
佐藤 駿 Facebook Twitter
デザインファーム【THE APP BASE株式会社】代表取締役/コワーキングスペース【DEN】管理人/未来の選択肢を共有するWEBマガジン【THINK FUTURE】編集長/欲しいものはつくろう、自分の手で。DIY写真.レシピ共有アプリ【HANDIY】運営
1984年9月27日生まれ。中央工学校建築設計科卒。3姉妹のパパ。
建築業界(現場監督、設計事務所等)→東日本大震災で価値感が大きく変わり、場所に捉われない働き方ができるIT業界へ転身。
起業と同時に東京から長野へUターン。長野でコワーキングスペースDENを始め、地方発の起業家を増やし小さな経済圏を構築、挑戦する人を増やす。
未来の選択肢を共有するWEBマガジン THINK FUTUREで新しいライフスタイルを提供。
スマートフォンアプリのデザインやWEBサービスのUI、UXデザインを主に手がけ、ひいては建築の意匠設計・地域デザイン等、「広義のデザイン(問題を捉える正しい表現を掴む)」と「視覚のデザイン(問題を解決するUI、UXデザイン)」の両面からアプローチするデザインファーム。