人工知能が最適なプログラムを提供してくれる学校教育とは?

FEATURE

教育の現状と未来・人工知能が教育を変える!?

学校なんて行きたくない。

外に出るのが面倒くさい。

人と関わるのも面倒くさい。

勉強だけならしてやってもいいけど先生という人間と関わるのは億劫だ - という隠居志向の方。

学校は楽しいけどなんとなく授業についていけない。

先生の言ってることは正直わからないけど質問するのも気が引けるし塾に行くのも嫌 - という学校での勉強というスタイルに苦手意識を持っている方。

もしあなたが30年後に生まれていたら、そんな悩みを持つ必要さえなかったかもしれません。

いや、もしかしたら10年後くらいにはもう教室にいる「先生」は人工知能かもしれません。

今、教育現場は大きく変わりつつあるのです。

公立中学校の約6割が「新卒先生」になる?

未来の話をする前に、まず現状を簡単に説明します。

今の日本の教育はどうなっているのか?

実は、文部科学省の調査によると特に公立学校において教員の若年化が急速に進行しているんだそうです。

2014年度には、なんと公立中学校の先生の実に63.61%が採用一年目の教員で占められているとか。

もしあなたにお子様があれば、おそらく半分以上の確率で大学を出たばかりの「先生」に教えられることになるってことです。

これってすごいことですよね。

普通の会社なら出来立てほやほやのベンチャー企業でもありえないほどの若手比率。

何故こんなことになっているのかといいますと、どうも30-50代の先生の数が非常に少ないのが原因みたいなのです。

この背景には、高校以下の教育機関の先生方の離職率の高さがあります。

それにしても、大学を出たばかりの22、3歳の先生方に教わるのって、さすがにちょっと不安というか、そもそも塾や家庭教師のアルバイトをしている大学生に教わるのとあんまり違わないんじゃないかって思われちゃっても不思議じゃないですよね。

それに、塾であれば先生を選べるし、「学歴」を気にされる親御さんとしては名門大学生を雇っている塾の方が公立の学校より安心できると考えるのもある意味当然のことかもしれません。

ということで、次は塾について少しお話しします。

塾なしには語りえない「エリート」教育

今や教育熱心な方であればほとんどの方が塾の利用を考えるようになりました。

ほんの数十年前までは、『学校で授業をちゃんと聞き、宿題にしっかり取り組み、試験の度ごとに復習を重ねていくという標準的な学習プロセスを淡々とこなすだけで「東大」にも合格できる』という授業中に居眠りしたり宿題をさぼったりするような学生に対する「学校の先生のお説教」にはある程度の真実味がありました。

ところが今はどうでしょうか?

東京では学力の高い学生のほとんどは小学校、あるいは中学・高校の段階で既に私立学校、あるいは入学競争率の高い名門都立学校や国立学校に通っています。

それだけではありません。

名門学校へ通うということは、その学校の入学試験に合格しなければなりません。

となれば入学の数年前から入学試験に備える必要があり、つまり、名門高校に入るなら中学校から、名門中学校に入りたいなら小学校から塾に通うことになるわけです。

こんな感じで塾産業はどんどん発達し、今では塾に入るのにさえ入学試験に合格しなければならないというような状況になっています。

どこの学校に通ったか、だけではなくどこの塾に通ったか、までもがステータスの一部になりつつあるのです。

塾の重要性があまりに高まった結果、東京では次第に名門私立学校の人気さえもが徐々に衰えはじめています。

つまり、どうせ大事なことは塾で習うのだから、「いじめ」などの学業阻害要因さえ取り除かれているなら学校にかけるお金はなるべく少ない方がいいということで、経済不況を背景に公立校が再び脚光を浴び始めているのです。

しかし東京に限って言えばそのことは「学校」の果たす役割が極限まで小さくなっているということを示すに過ぎません。

このように、「東京大学・国立医学部合格」という明確な目標に向かって幼少期から入試直前まで塾に通い、ライバルと情報を共有し、受験のテクニックや出題傾向などを塾でみっちり叩き込まれている都内名門校の精鋭達に、地方の公立学校に通って授業や課題をきちんとこなし、校内試験でトップの成績を維持し続け、塾に通うこともなく部活動に積極的に取り組む旧来の「優秀な学生」は敵うでしょうか?

尤も、現実には地方公立学校の学生の間でも上位層を中心に塾通いは相当浸透しているのですが、それにも関わらず2015年度の東京大学合格者のうち実に6割弱が東京・関東地域出身となっており、また2010年時点ですでに全体の約55%が私立・国立校出身となっています。

つまり、学校の授業以外特別なんの教育も受けていない、「地頭の良さ」だけが頼りの公立育ちの田舎の「天才」にとって、東京大学合格という目標はどんどん遠のいているのです。

人工知能が「あなた」に最適なプログラムを提供してくれる時代へ

A photo by Gilles Lambert. unsplash.com/photos/pb_lF8VWaPU

こうしてみると、現在の教育の重心が従来型の「学校」から「塾」へと完全に移ってしまっているということがわかると思います。

ですが、こんな今だからこそ「学校」を「技術」の力で変革することに意味があるとも言えます。

実際、従来型の教育のコンセプトを覆すような新しい技術が少しずつ発展しているのです。

例えば、人工知能による学習システム。

実は、海外では既に部分的に人工知能を導入した英語学習システムが開発されています。

リンク先の記事にある「Cooori」を使って英語を勉強すると、システム内の人工知能が個人の傾向を学習しそれぞれに合ったプログラムを提供してくれるのです。

つまり、人工知能が先生の役割を果たしてくれるというわけです。

実は、我々日本人にもなじみ深い「トーフル・TOEFL」テストのライティングの採点にも人工知能が導入されており、語学学習の様々な場面で徐々に人工知能が使われ始めています。

近い将来には誰もが自宅で効率的に英語や中国語を学習できるようになるかもしれません。

勿論、人工知能によって効率化できるのは何も語学学習だけではなく、現行の大学受験レベルの内容限定すれば、基本的には大量の重要事項の暗記が必要(必ずしも十分ではない)となる地理・歴史および現代社会や政治・経済などの社会系の学習においてもCoooriと同様のシステムで大幅に効率化できるでしょう。

当然古文・漢文もそうですし、理科系でも生物・化学・地学は相当な暗記項目があるためこれも効率化できます。

物理・数学も基本的な公式と典型問題の習得段階までであれば機械的に学習することができるとすれば、公教育として保障すべき一定水準の教育は人工知能によって行うことができるということになるでしょう。

そうすれば公立学校の先生方は公立・私立間の格差や「塾」による格差を解消するためのより高度な教育に時間をかけることができるようになるかもしれません。

尤も、これだけでは教育の不平等あるいは学力格差自体は解消されませんが、少なくとも一定水準の教育を平等にすべての国民に提供するという公教育の基本テーゼを達成するという点において、人工知能が果たし得る役割は決して小さくないでしょう。

人工知能が単純な基本事項の教育を担ってくれるようになれば、これからの教師は今までよりももっと創造的な教育を行うことができ、またこれまでは手が回らなかった人格的教育や道徳教育などもより適切な形で十分な時間と手間をかけて行えるようになるかもしれない。

もちろん人工知能の利用については倫理的課題もあり、一部には進歩した人工知能が「ターミネーター」のようなものにつながるのではと危惧する声もありますが、人工知能の応用はこれからの未来に希望をもたらす可能性もあるのではないでしょうか。

ライター:神谷 匠蔵


Editors' Voice

学習の形態が変わっていくのは、時代が流れているので当然といえば当然な流れ。

暗記というところでいえば機械に人間はかなわないので、「掘り下げるポイントを広く知っておき、自分なりの解釈でうまく編集すること」が人間にとっては重要になってくるのだと思う。

オンラインスクールはどしどし増えてくれるのは歓迎だが、オフラインのやり取りはロジックでは計れないもので、対面で矛盾をする体験の大切さも合わせて経験していくことも人として生きていくには重要だ。

佐藤 駿
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デザインファーム【THE APP BASE株式会社】代表取締役/コワーキングスペース【DEN】管理人/未来の選択肢を共有するWEBマガジン【THINK FUTURE】編集長/欲しいものはつくろう、自分の手で。DIY写真.レシピ共有アプリ【HANDIY】運営

1984年9月27日生まれ。中央工学校建築設計科卒。3姉妹のパパ。
建築業界(現場監督、設計事務所等)→東日本大震災で価値感が大きく変わり、場所に捉われない働き方ができるIT業界へ転身。
起業と同時に東京から長野へUターン。長野でコワーキングスペースDENを始め、地方発の起業家を増やし小さな経済圏を構築、挑戦する人を増やす。
未来の選択肢を共有するWEBマガジン THINK FUTUREで新しいライフスタイルを提供。
スマートフォンアプリのデザインやWEBサービスのUI、UXデザインを主に手がけ、ひいては建築の意匠設計・地域デザイン等、「広義のデザイン(問題を捉える正しい表現を掴む)」と「視覚のデザイン(問題を解決するUI、UXデザイン)」の両面からアプローチするデザインファーム。